合気道の根源 呼吸力の本質に迫る

 

合気道の稽古を行う上で「呼吸力」の理解は、必要不可欠でしょう。ところがこの大事なキーワードは、時に合気道の理解を深めていく上で、初心者が最初に迷走していってしまうキーワードとなっていることは否めません。そこで合気道の原点に立ち返り、呼吸力について解説していきます。

 

呼吸力を理解することが上達の条件となる

「氣」、「呼吸力」などと言った言葉から何を連想するでしょうか。テレビやその他のメディアなどの影響から、おそらく「触れずに相手を飛ばす」「触れてもいないのに、思い通りに相手を操る」そういったことを、思わず連想してしまう方がほとんどだと思います。
それと同じように合気道の稽古年数が未熟なうちは、「呼吸力」という言葉を聞いたときに、合気道の技の仕組みの理解が浅いことなどが原因で、知らず知らずのうちに「不思議なモノ」というように、理解してしまっているのではないでしょうか。
しかし合気道の稽古をしていると、師範や指導員の先生方から頻繁に「呼吸力」という言葉や、「氣」という言葉が使われていることからも分かるように、この合気道の稽古には、呼吸力の理解は非常に重要であることが容易に理解できるものと思います。ところが私達はこれまでの生活で、非常に限定的な、そして目に見えた結果からしか、この「氣」や「呼吸力」と言ったものを捉えられていないことから、理解が難しくなっているのです。

 

呼吸力を見えるものに変える「カギ」

「氣」や「呼吸力」というのは、本当に「触れずに相手を飛ばす」「触れてもいないのに、思い通りに相手を操る」といったような不思議なものなのでしょうか。
そもそも私の主人は、テレビなどのメディアに出演されるような技をする合気道家の方や、他の武道家の方と稽古をした経験がないので、そのことについてはっきり申し上げられないのが現状です。結果だけを見れば怪しさ100点満点です。ところが、視点を変えていくと、そこには日常生活や、日常に行われている通常稽古などの、ありふれた場面で、頻繁に同じことが起きているのです。

 

視点を変えていくことで、呼吸力や氣を実在するものに変えていくことができるのです。

 

 

行動を変える力

素敵な映画や、感動的な体験をした後、無意識のうちに行動が変わってしまうという経験を、一度は体験したことがあるはずです。また、自分が尊敬する人や、愛する人がしている行動が、自分にとって素敵な行動である場合、無意識のうちに真似をしてしまっていたり、いつの間にか同じような行動をとってしまっているということはないでしょうか?
さて合気道の稽古をしていると指導員の先生から、「もっと肘肩を柔らかくして受け身を取ってみてください。」「足がその場に居着かないように受け身を取ってください」とお願いされることがあることと思います。その時皆さんは、すぐに指導員の先生のお願いに従って、お願いした通りに動いると思います。

 

実は感動的な体験が自分の行動を変えてしまったり、尊敬する人や愛する人の行動と同じような行動をとっていたり、指導員の先生からお願いした通りに動いたり、先ほど「氣」や「呼吸力」のイメージの例として挙げた怪しさ100点満点の技は、どれも共通して、「行動が変わった」という結果があります。

 

これは行動が変わったという点では、根本的なところでは、同じ「力」が作用しているのです。

 

意識の変化が行動を変える力

意識には、潜在意識と顕在意識があります。そのどちらかが変化することで、人は行動が変わるのです。先ほど例にとったもののどれも、体験や言葉等から、潜在意識、や顕在意識に変化が表れて行動が変わっているのです。

 

このように、こうしてあらゆる場面に潜在意識や顕在意識に作用させて、人の行動を変えるということは、そこに何らかの力が影響を与えたと考えられるはずです。
合気道ではこうした力の事を、「呼吸力」と言います。

 

火事場の馬鹿力

人は窮地に立った際に、迫りくる危機的状況を回避するために、時には信じられない力を発揮するものです。そのような力を、一般的に火事場の馬鹿力と呼んでいます。一見すると、特別な力のように感じられますが、実はこのての特殊な力は、私たちの日常に溶け込んでおり、知らず知らずのうちに発揮されているものなのです。

 

例えば、普段の勉強の時には中々習得できない問題だったのに、学校のテストの時や入学試験の時、先生に発表するように求められた時などに限って、そのような問題が解けてしまったことはないでしょうか。また普段の稽古の時には、中々習得が出来ず、苦手意識があった技が、審査になると、普段よりばっちり決まったことはないでしょうか。このように、普段なかなか意識していないときでも、実は日頃の自分以上の実力を発揮している場面があるはずです。

 

このように普段の力量以上の力が発揮される条件は、「集中力」によるものでしょう。緊張、危険等の特殊な場面では、普段以上に集中力が高まることで、想像以上の力が発揮されるものです。
このように、自分の最大限の力を発揮するための集中力も、合気道では呼吸力と呼んでいます。

 

秘められた可能性の力

このように合気道でいう呼吸力と言うのは、非常に幅広い解釈があります。それゆえに、それぞれの先生が言葉で説明される呼吸力の説明が違ってくるのです。しかし、呼吸力の本質を見て行けば、どの先生の説明も的を得ているものばかりです。
そして呼吸力とは、今まで見てきたように様々な力の事を言います。そういうわけですから、呼吸力について「こういう時に発揮される力が呼吸力です。」等と一つ一つ解説していてはきりがありませんし、それ自体に意味がありません。

 

呼吸力について一言で言うなら、人生を歩むうえで、私達それぞれに「秘められた可能性の力」と解釈するのが妥当なような気がします。

 

合気道の稽古を積むことによって、皆さんオリジナルの呼吸力を見つけ出してみてください。